2015/02/26

「コンプライアンス企業へ生まれ変わる」ランドキャリーが抜本的改革に着手

コンプライアンス最優先企業に生まれ変わるー。㈱ランドキャリー(森部鐘弘社長、愛知県

春日井市)は、2011年に起こした名神高速道路での追突死亡事故をきっかけに、社内体

制を抜本的に見直した。それまで現場の責任者任せだった安全管理を森部社長が主導す

るかたちで組織一体となって取り組んだ。大きな決断として、長距離主体だった運行形態を

地場中心へ移行するなど無理な運行を廃止。また、法令順守体制を徹底するため拘束時

間や連続運転時間などをリアルタイムに把握できるようデジタコやドラレコ、そして運行管理

ソフトを入れ替えた。「安全はすべてにおいて優先する。不謹慎かもしれないがあの痛ましい

事故を教訓に当社は生まれ変わることができた」という同社常務取締役の河村敏彦氏に話

を聞いた。

 

―まず、事故当時の社内体制について聞かせてください

 

河村:小さな事故の積み重ねが大きな事故につながると考えれば、事故は起こるべくして起き

たと言っても過言ではない。安全管理についてそれほど意識が高くなかったことを真摯に反省

している。

―事故後はどうなりましたか?

河村:「事故は絶対悪」という森部社長の大号令の下、運行形態の見直しをはじめ事故防止の

取り組みを徹底していった。その結果、2012年には事故が半減した。そして2013年にはさら

に半減したが、その後が伸び悩んだ。そこで、事故をなくすにはもっと客観的な情報が必要だと

して、グループが保有する150台すべてのトラックにデジタルタコグラフを更新したほか、新たに

ドライブレコーダーも設置した。

―どのような管理ができるようになりましたか?

河村:急ブレーキや急発進などをピンポイント映像で捉えることができ、ドライバーに危険運転に

関する具体的な注意を促すことができるようになった。また、外的な危険要因も把握できるので

ヒヤリハットの横展開ができるのも大きい。

―運行形態はどのように見直しましたか?

河村:まず、これまでの長距離を一切やめて2年間かけて地場輸送に切り替えた。それによって

収支面で厳しい時期もあったが、ようやくコンプライアンスに則った上で収益が上がる体制になっ

てきた。

―事故では拘束時間や連続運転などの問題が指摘されていましたが、それらはどのように管理

していますか?

河村:今回、当社が使用している矢崎のデジタコに連動する労務管理システムを導入した。これ

は、ドライバーの労働時間をデジタコでチェックし、1か月の最大拘束時間293時間から日々減

じていくシステムで、オーバーしそうになると警告してくれる。これまでは日報から人の手で労働

時間をチェクしていたので、手間や見落としなどがあった。労務管理システムによって、労働時

間の調整ができるようになったことは大きい。

―つまり、安全管理も労務管理も「改善から予防へ」と意識が変わったということですね

河村:そうです。さらに、現在はアイパッドを利用して危険予知トレーニングをするシステムも導入

し、ドライバーの運転適性を把握している。これによって、一人ひとりに対応できる運行管理に取

り組んでいる。

―順調に成長してきたランドキャリーが事故によって大きな転機を迎えました

河村:コンプライアンスなしに企業の成長はないという意味で、自社を足元から見直す契機となっ

た。事故防止に絶対はないが、あくまでも事故ゼロを求めて貪欲に取り組んでいく。それが我々

の責任でもあると考える。

―ありがとうございました

 

2011年6月、大阪府茨木市の名神高速道路で、同社岐阜営業所所属のトラックが渋滞の車列に追突。

車5台が炎上し、2人が死亡し5人が重軽傷を負った。大阪府警は、トラックの運転手を自動車運転過

失致死傷及び道路交通法違反容疑で逮捕。また、当時の岐阜営業所長ら関係者4人も逮捕した。

その後、追突した運転手が過労状態であることを知りながら運転業務に就かせたとして、法人としての

同社も書類送検された。管理者が運転者の過労を認識していたかどうかが大きく争われた同裁判だっ

たが2014年3月、大阪地裁は道交法違反(過労運転の下命)で2被告に対し執行猶予つきの有罪判決

を下した。同判決は長距離輸送に横たわる”長時間労働”という問題点を改めて提起するものとなった。

 

2015.2.25

 


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