2014/12/17

和田康宏の「転ばぬ先の知恵」Vol.17

運送会社専門のコンサルタントとして活躍する「あいち経営コンサルタント」の和田康宏氏。コンサルタント実績は300社を超え、多くの社長・ドライバー・管理職と接してきたその実績はどんなコンサルタントよりも中身が濃いと評判だ

 

「健康診断や安全教育は事業者がその気になればすぐにでも改善できます。でも、

労働時間はすぐに改善するのはかなり大変ですよね?」

ある監査官との雑談です。

確かにそうです。

運輸監査で法令違反を指摘されたとき、簡単に改善できるものとそうでないものがあります。

健康診断や安全教育であれば、実際に時間を確保すれば、すぐに実施できますので

改善も簡単です。しかし、労働時間だけは別です。

仮に労働時間を短くするとどうなるのでしょうか?

まず、運賃収入(売上)が減ることが多いでしょう。

売上が減れば、当然のことながらドライバーの給料も減らさざるをえなくなります。

給料が減ると、辞めるドライバーが出てきます。

辞めるドライバーが多くなると、仕事が回せなくなります。

ここで運送会社としてどのような選択をするのか?

運命の分かれ道です。

労働時間をある程度(少し語弊がありますが)守ることができる仕事を探し、少しずつ改善していくか。

あるいは、どうしようもないと諦め、労働時間を改善せずに現状のまま放置してしまうか。

この2つのどちらを選択するか、です。

当面は事故や監査がなければ、どちらを選択しても問題がないように思われます。

しかし、近い将来、何かのキッカケで監査を受けた時。

その時、果たしてどうなるのでしょうか?

地道に労働時間の改善を積み重ねてきた事業者さんは、改善の途中でドライバーに辞められて

苦労することがあったでしょう。

それでも、例えば新たな業務を獲得することや既存荷主に粘り強く要請することで、労働法令を

守ることのできる健全な経営体質に徐々に生まれ変わっていきます。

一方で、何も改善もせず問題を放置してきた事業者さんは、ココに来て遂に行き詰まるでしょう。

なぜなら、国土交通省に指摘されて数ヶ月間で労働時間の改善をすることは経営的に

かなり厳しいからです。現在、すでに見えないところで、労働法令の遵守状況について相当な

差が運送事業者間で開いています。

この同業他社にはなかなか分かりづらい“目に見えない”差別化。

これをどれだけ日頃から積み重ねていけるか。

これだって会社の立派な経営戦略なのです。

何も国土交通省の監査のためだけではありません。

これからはドライバー不足が深刻になります。

そんな中で、優良なドライバーを確保し、定着させることができるかどうかは

中小運送会社にとって死活問題。そのためにも、労働時間の改善は絶対に

着手しなければならない大きな取り組みですね。

 

2014.7.23


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