運送会社専門のコンサルタントとして活躍する「あいち経営コンサルタント」の和田康宏氏。コンサルタント実績は300社を超え、多くの社長・ドライバー・管理職と接してきたその実績はどんなコンサルタントよりも中身が濃いと評判だ
残業月間160時間以上で「過労死」。
運転中に急死したドライバーの遺族が、勤務先の運送会社に対して8000万円超の損害賠償を
求める訴えを昨年12月に起こしました。
すでに「労災認定」は受けているのですが、それだけでは納得できず更に追加での訴えになります。
「会社が健康への配慮を怠って、無理な仕事をさせた」
運送会社が訴えられた理由です。
いわゆる「安全配慮義務違反」。
それにしても「残業月間160時間」は運送業界の今までの常識からするとそんなに
長時間労働ではありません。
仮に1日8時間を所定労働時間、1ヶ月22日稼働と考えても、1ヶ月の労働時間は
8時間×22日=176時間
これに160時間の残業時間(法定外労働時間)を加算すると「336時間」となります。
残業を入れた「労働時間」だけでも、改善基準の「1ヶ月の拘束時間」293時間を超えるので、
確かに違反ではあります。
しかも、拘束時間には労働時間だけでなく、休憩時間(仮眠時間を含む)も加算されますので、
実際には336時間よりも更に拘束時間は長くなるでしょう。
しかし、です。
それにしても「残業月間160時間」は他人事ではありません。
ご存知のように運送業の場合、労働時間といっても「荷待ち時間」が相当時間含まれています。
この「荷待ち時間」は運送会社の都合というよりは、荷主企業の都合によるものも多くあります。
案外ドライバーもゆったりとすることができる時間もあったりして、実際にはそんなにハードな
業務でないことも多々あります。
もっとも「だから少々長時間働かせても大丈夫なんだ!」と言いたい訳ではありません。
冒頭のような過労死裁判が今後、運送業界にどのような影響を与えるのか。
一昔前なら「社長には世話になっているからそんなことは言わない」
これが半ば常識だったような気がします。
今は全く違います。
「別の仕事についていれば、もっと子どものそばにいれたと思うんですね」
冒頭の裁判を起こした遺族である妻の発言です。
死人に口なし。
たとえ社長さんと亡くなったドライバーとの間では良好な人間関係を構築していたとしても
問題は起こりえるのです。
ドライバーの労働時間の短縮と健康管理の強化。
これからの運送会社の最優先の安全対策ですね。
2014.2.12